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趣味が到達した聖剣伝説

鍛冶屋剣 フィクション

面白い事は自分で決める。

街角で「面白いね」って騒いでいるので覗いてみると、全然そうじゃないって思うんだ。「時代に乗り遅れてしまっているのか私は…。」という苦悩にさいなまれる事もある。人にとっては面白くて、自分にとっては面白くないとするのが染みついていた。それもこれも私が、古き良きを愛してやまない事への忠誠の証だった。

看板剣盾

鍛冶職人は、より強固な防具を作っていく。部位が多数に存在するため、デザインを含めれば、それだけで十分にやっていける。おまけに客は、騎士階級の金持ちばかり。極論だが、王家の紋章を入れるための競売に勝てば、一流のブランドでさえ簡単に手に入る。

馴染みの職人を見かけると、必ず聞くようにしている事がある。

「剣は出来たのか?」

「あぁ、最近また、出回ってる鉄鉱石で作っているが・・・」

その答えは、いつも通りだ。聞きたくない事なのに、もしかしたらと思うと、聞かずにはいられない。それぐらいの熱い気持ちがあった。そして俺はまた、やりたかった事を思い出し、この胸に刻んでいく。

聖剣斜め上

森を駆け回る少年だった俺は、通りかかる荷馬車の強奪を繰り返していた。悪党に生まれついた奴らは、自然と集まってくる。仲間は増えても、良い事ばかりではなかった。できないやつも出てくる。足手まといに食い物を渡すと、決まって泣きながら食べるのが面白かった。だから、強奪を止める事は決めていたんだ。

俺がいれば成立しているようで、本当は上手くいっていない。できないやつは、他のできる事をやればいい。強奪以外なんだから、そっちの方がいいに決まっている。全員が活躍できるステージなんて、どこにもないって事には、もう幼心に気づいていた。俺は自分の目の前しか見る気はなかった。


「おすすめする」ためには。

身体が大きくなれば働き口ができる。どこかの国家に所属すれば仕事がある。温かいスープと柔らかい布団が手に入る。明日には死ぬかもしれない傭兵だったが、通りかかった奴が定住権推薦をすると言い出した。騎士団長らしいが、なおさら、美しい行為がしたいという願望丸出し。偽善行為なのは分かっていたが、乗っかる事にした。

古紙羽ペン

気持ちとは裏腹に義理立てること。騎士団長を守るために、鍛冶屋の下積みを志願する。それが立派な事だ。歯を食いしばれば、自ずと受け入れられた。

どうやら生まれが悪くても、出会いには恵まれているらしい。そこの鍛冶屋の技巧が大陸全土に知れ渡るほどだった。下積みを終えた日には、必ず「名工」と呼ばれる事が約束されている所。心の中で、何かから解放されるような気持ちが、湧き上がってきていた。

海賊バンダナ

人が良いというものを、良いと思えない自分の気持ちで「おすすめ」する訳にはいかない。かといって周囲が良いとしている事だって、同じ堀の中での比較だ。万人に通用する事ではないとするのがセオリーだ。

鍛冶屋の親方は、思いついたように戯れ言を話し始める事が多い。居合わせたやつは、分からずとも返事をする。それがルールだ。戯れ言でも話さなくなったら、師弟関係は終わりを迎える。いつも返事が遅れる俺には、まだ迷いがあったんだと思う。何もかも決め兼ねている「優柔不断」と言われながら過ごしていた。


集まりは同じ価値観を共有する。

硬度が高い鉄鉱石が出土していた。黒い成分を多く含む事で強固となっている。まだ下積みだったが、強奪で育った勘がそう言っていた。場所は隣国の領土。これで隣国の装備は強化され、武器の貫通力も格段に上がっていくだろう。それに対して、こちらの国は、冷静でいられるはずもない。

ビショップ白黒

黒い鉱石の交易や分配の取引には、金を出し惜しみしてはならない。この装備水準は、兵力に格差をもたらしてしまうほどだ。やがて強力な軍勢に目が眩んだ隣国は、勝利の美酒を求めて攻め込んでくるだろう。同じ装備水準で均衡を保つべきだが、資源は隣国の領土だ。格差に対する規模が、子供のケンカ両成敗で済まされているうちに・・・。

鍛冶職人が集められた室内での事だった。俺の解釈で言うと、城取り合戦の打ち合わせだ。相手の増強は続くばかりだから、こちらの装備水準を上げて兵力の均衡を目指す。万が一にも兵力の差が物量的に、城を取るレベルまで開かないように詰め寄り続けるという内容だ。鍛冶職人にとっては黄金時代の始まりを意味している。

紋章縦長

黒い鉱石は国の金で買い上げられ、鍛冶屋に配られていった。王家の紋章が、交易で手に入れた黒い鉱石である目印として使われていった。

そして、うちの鍛冶屋に黒い鉱石が、全く来る気配がない。それが親方の趣味としての鍛冶を、誰もが認めている証拠だった。

聞いた事があるかもしれないが、これは本当の話だ。親方は寝言にも仕事の話をしている。「休まずに好きなだけ働く」という口癖が、今この時だけは、真実味を帯びていた。

そうこうしているのも束の間に、扉を叩く音がした。黒い鉱石の使用が、王政側の通達である事に変わりはない。階級的には、騎士団長のお出ましとなる。

久しぶりの対面というのは、案外あっけないものだ。顔を合わせるのも一瞬で、二人の間には何かが凍りついた。先に口を開いたのは、親方の方。

海賊バンダナ

やっている事は違うようでも、何か同じ要素を面白いとしている。それは、なんとなく感じるんだ。理由はないけれど、自然と一緒に過ごす時間が増えていく。何を重要としているかのヒントが増えていくんだ。結局、逆の事だったりすると、冷めてしまったりする。そこには、すかさず「仲が良ければ、それでいい」って、思うようにしているんだ。お互いの価値観を尊重するための、これ以上の言葉を、今の所は持ち合わせていない。

相変わらずの戯れ言だと思ったが、これまで以上に分かりやすかった。思わず何かをかばおうと、前へ踏み出そうとしていた。

騎士団長白黒

「前と同じじゃないか。」

騎士団長の言葉に身体の力が抜けていった。どういう馴染みかが見えずに、黒く渦巻いていった。親方は何かと杖代わりにしていた剣を、騎士団長に渡した。

そこで騎士団長は帰って行った。そこで終わった。事を成さずとも、それで終わった。この関係性が今の俺には、なぜか猛烈に許せなかった。


トランプのジョーカー。

ドローポーカーをやろうと親方を誘った。人間は目の前に対して必ず「警戒」の念を抱くものだ。大人同士が対面する時は、抗議の始まりを意図している。今日という今日は聞き出すつもりだ。定住権推薦の時にもあった、無言のやり取りをする騎士団長との関係を。

「ジョーカー。」

トランプ無造作

親方はどの局面においても、絶えず「ジョーカー」と言っている。戯れ言も、こう極まると手に負えない。俺は翻弄されていた。手札の中にあるのか?引いたカードの事か?ただ欲しいだけなのか・・・。もう一ヶ月分の酒代を取られている。

そうだ、ギャンブルに関しては、めっぽう弱かった。もはや下積み仲間は、俺が逃げないようにしている監視員に見える。完全に俺がカモ。親方の仕事に固執している脳みそを、少しは叩いて鍛えてやろうと思っているのに。

横葉っぱ

王の玉座には、冷静な面持ちを構える男が座っていた。予想を裏切らなくても優越感に浸る事ができない複雑な表情を浮かべ、これ見よがしに待っていたかのような仕草が、不甲斐ない。何に例えようもない不条理・・・「来たか。」とだけ言葉を発した。

モノチェス

取り囲む軍勢は3000。全員が黒い防具をしている。そして、どの武器を見ても漆黒に光る輝きがあった。衛兵が3000集結した。数は互角だが、黒い鉄鉱石の武器と防具は誰もしていない。

生産が追いついていなかったんだ。取引や交渉を介するせいで、黒い鉄鉱石の搬入が遅れ、装備が揃わない事なんて当たり前の結果。だがそれを、指を咥えて待っていた訳ではない。

駆けつけてきた、騎士団長が率いる騎馬隊。黒い鉄鉱石で作った武器と防具をしていた・・・その数は100。

キングトランプ

運とは時に残酷な答えを用意しているものだ。人数で互角と言っても、苦しい捉え方にほかならない。王座から立ち上がる男が、つぶやく・・・「あなどるな。」

駆け回る騎馬隊から、黒鉱石の剣がばら撒かれていく。その数3000本。装備の生産力は、剣の製造だけに一点集中されていた。これが遅れるなりのやり方。追いつけない劣勢の中で、必ず希望となる。

勝機が微かに見えた気がした。切られる前に切ればいい。始めから負ける戦いをする必要はないんだ。不利な状況下では類似にとどまらず、一点突破。防具の話は、後で酒を飲みながら語ればいい。それでいいはずだ。孫氏の兵法にも通じる部分が、均衡を作り出していた。手腕とはこういうものである。

ジャックトランプ

力尽くでもいい。押し切ったとしても、剣はまだそこにある。いくら振り回そうとも握りしめている。それが武器なんだ。近くにいて存分に力を貸してくれる。

戦うことを剣と約束するんだ。攻撃することを剣に誓え。何度となく剣がはじかれようとも、心が折れることはないであろう。まだ剣を握っているのなら、続く選択肢も攻撃だ。


でたらめな話には、天からの白羽の矢が突き刺さるのがセオリーだ。黒い鉄鉱石の防具による、生存率の高さが仇となりかねない。黒い鉄鉱石の武器による攻撃が、一撃死であるのを前提にして、先制を取った取らないとする事のみが、互角になっているだけだ。それ以外の攻守の駆け引きでは、相変わらずの不利な状態。勝敗を論するのは難しいが、要は死ねと言わんばかりの、いや「天は見捨ててはいない」そう自分に言い聞かせた。やってみないと分からないって言えば早い。

愚か者トランプ

天からの白羽の矢は、当然の結果を示すだけだ。数は2000対1000の局面となっている。くつがえしようのない事実。英雄陣もざわめき出す、そんな時だった。男が、つぶやく・・・「ジョーカー。」

ナイト団長

兵に埋もれていたせいで見落としていたのか、徐々に現れるかのように、視界が集まっていく。そこで戦っていたのは騎士団長。よく見れば「黒鉱石の剣」を持っていない。構えていたのは「名工の剣」だった。それは硬度が歴然と足りないはずだ。

海賊バンダナ

ギャンブルも、分析や解析が進むと、数取りゲームになる。外れた量と当たった量の差し引きが始まるんだ。ただ、その中では確かなものが積み上げられていて、それが形になった時は、それが確かなものだ。確かなものは1本でもいい。積み上げられた高さが、天にも届くようだから。

「名工の剣」それは素材ではなく、技巧により作り出され鍛え上げられる、聖剣だったんだ。その剣が、騎士団長の手には何周にも布切れで巻きつけられ、固定されていた。

しばらくすると、争いは幕を閉じていた。


大人の取引の要となるのは。

黒い鉄鉱石が発見されてから、加工技術は乗り換えられていた。取り残されたような「名工」だが、その剣は今も王の玉座に突き刺さったままだ。

男剣

あの時「名工の剣」は、騎士団長が落馬した瞬間に折れていた。それをほぼ全員が目撃し退却の合図になった。

心の中の片隅で、知らぬ間に期待してしまっていた。「名工」があるからという希望が確かにそこにはあって、諦めずに立ち向かう後押しになっていた。だが、それは勇気ではない。ただの無謀なんだ。ここで必要なのは逃げるという勇気。物事には、往生際引き際がある。騎士団長はその時に死んでしまったが、見事に変なプライドと意地を、粉々に砕いたんだと思っている。


チェックするべき事柄。

この国は隣国の占領下に置かれ王は処刑された。王として当たり前の事をしていたし、王として当たり前の結末だ。ちょっとばかり優秀だったんじゃないかと思うのは、死ぬ事を自ら選んでいた事だった。負けて時が経ち、事実が忘れさられていく中では、いずれ多くの犠牲者を生んだとしか言われなくなる事も、優秀が故に耐えるつもりはないだろう。

お墓

最後まで優秀で終わる、この上ない方法。「有終の美を飾る」最後の願いが、聞き届けられた理由はそれだった。ただ「名工の剣で王の玉座を貫く」とは何事なんだろうか。

資格ライン

街では誰もが、人が変わったように暮らす。主義主張など一晩で衣替えされる。上が転々と変わっている訳で、下には止めようもないし抗っている暇もない。制度と言われれば従う。その時々に適応して生きている。「従っているだけ」というのが、この時代のアイデンティティ。最後には気分のように「所属国変えようかな」なんて言い出す始末だ。

そんな中でも、王の玉座には目を見張るものがあった。ある者は「名工の剣は確か1000人斬りして折れた」と言い出す者や、「この世で一番貴重な素材で出来てる」とか「あり得ない技術が使われている」など、俺に言わせてもらえば・・・「すべて正解だ。」

不死鳥炎

こうやって伝説が生まれていくんだ。王がいなくとも伝説が人を惹きつけてやまない。「王の玉座に突き刺さる名工の剣」を見て、この国を去ろうと思うものは誰もいないはずだ。


息切れ。

黒い鉄鉱石は申し分なく流通した。親方も使い始めているが、思うように鍛えるには、相当の力とスピードで叩かないといけないらしい。素材が良いから、適度に叩いて温度管理をすれば、十分に前よりも強い。なのに、何がそう息切れするまで叩く必要があるのか、聞いても前と同じだと言う一点張りに、嫌気がさしていた。

海賊バンダナ

物が変わっても、確かなものに変わりはないんだ。古臭いと全てを捨てれば、私とあいつも、お前が見た事も、全てが無くなってしまうようなんだ。私の剣は、この素材で完成する事はないかもしれない。

名工の鍛冶屋は店じまいとなった。息切れの果てに、親方が死んだからだ。それでもブランドは生きていた。「玉座に突き刺さる名工の剣」が「王家御用達」となって息を始めたんだ。下積み仲間は、磨いた腕を存分に使い、ブランド価値を高めていった。「名工」と呼ばれる約束が不死鳥となって、守られたんだと思う・・・だけど、何かが違う。

緑のバンダナ

俺だけが知っている訳ではないはずだ。素材が違うって事を。受け継ぐべき本当の技巧の良さでは、新しい素材を叩ききれなかった。単純に強ければいいと、それで済む話ではない。俺には責任があって、黒い鉄鉱石で「名工の剣」を完成させる事なんだ。

俺は親方のように、思いついたように戯れ言を話し始める人間になっていた。

何が言いたいかは言い切れていなくて、言いたい何かは確実にあるものだ。どうにも繋がる話ではないようだが、そういうものを「見ている」と言えばいいのか、これで分かるかどうか。

俺がやりたいのは、折れた剣でも伝説となる事なんだ。

– END –

ファンタジーの世界観をインストール。(blu-rayとDVDに注意)


冒険の結末から、また冒険へ。

失ってから気づく事が多くて、耐えられない事もある。鍛冶職人の黄金時代が終わったどころか、鍛冶職そのものが、ケーキ屋さんに打って変わられていた。ケーキ至上主義とでも言うべきか。今までは、金持ちと言われる相手を、より強くしていく鍛冶社会だったんだ。強さの果てに戦争を起こして死んでいく訳だが、今回は甘さの果てに太って死ぬのだという。肝心の縄張り争いはというと、ケーキ技術に関しては大陸のエルフ族の支援を受けられるらしい。そういう事なので、戦争はフリーパスだ。エルフが3人も揃えば、城が一つ消滅すると言われている。人間なんか滅ぼす価値もないのだ。そういう存在があってもいい。そこにゴマを擦っているというよりかは、甘さで生きるか死ぬか以外は知らない事にして生きている。無論だが、人が犬や猫を同じ動物として滅ぼそうとは思わない。それと同じ事だ。

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