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帆走-Sailing

夕日侍 読み切りストーリー
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鉈シルエット

山奥で伐採が行われていた。
通りかかった私の名は「辻斬り八兵衛」
殺せばいい、それだけだった。
そうやって逃げ延び、生き延び、齢14年。

小屋を訪れた。
男が手に持つ獲物は、ただの鉈。
私の腰にあるのは、日の目を見ない「妖刀・村正」だから、理由はない。動く屍のような毎日を歩いている。「道」である事も、忘れかけているのだろうか。

光を幾重にも屈折させる鮫肌のような刀身は、 影と同化する。
漏れた光が、お前の目に入る頃にはもう、刃が体の奥へ食い込んだ後だ。
この刀身の目撃者となる者は、決まっていつも、何もしゃべらない。
鞘から抜いた姿を言い表せられるとしたら、まだ俺しかいない。

雅帯
日本刀シルエット

いつから始まっていたのだろうか。
それよりも、お前に問いたい。

その道の答えを。

侍シルエット

「何をしている?」

「薪割りだ。」

わからない。どれだけの月日を要しているのかは知らないが、口を吐いて出る言葉は、その程度だ。「続ける価値はあるのか?」そう鞘の中から、声がしたようだった。

「つまらん。」

道理が通らないと、吐き捨てたつもりだった。ただ、鞘の中からの声は続いてたかのように、悪を帯びた言葉になってくる。

「今までに何かを得られたのか?」

振り返ると山道を登ってくる女が見えた。出で立ちからするに、ここに住む者だとは容易に分かる。

「幸せそうだなぁ。血で血を洗うお前とは違って。」

「もう、いいんじゃないか?」

病んでる剣士

鞘からそう聞こえたのか、自分で言ったのか分からなかった。ただで済ませて進んできた訳ではない。それは、どうにでも受け取れる。それぐらい分かっている。今の自分がなすべき事をやろう。今の自分ができる事をやろう。それが最善のはずだ。どうして私の右手は柄を握る直前で、止まっているのだろうか。なぜ左手の力は、鞘を十分に掴んでいるのだろうか。いつでも良い。だから、いつでも良い。これもそうだ。色々な意味を持つ事ができる。こんなにも無数が無数を呼ぶ中で、正気でいられるはずはない、それが賢明だ。狂気の沙汰だと誰もが思うだろう。

言霊が一気に放出されて飛び交い浮遊し始め、各々に存在を象徴しようと視線を送りつけてくる。この声を聴いてはだめだ。危機を感じたのか、震え始める。恐怖だと知り、怯え始める。これが何かに縋りたい想いか。

力を込めて、私は刀の柄を握りしめた。そこで目の前のお前は、どこかに持っていた「お守り」を握っていた。それが見えたんだ。そこで近づいてきた女が、お前の袖を握った。それが「成果」なのか「報酬」なのか。

力があるとは、こんなにも非情。
刀を抜き、天に振り上げる今も、まだお前には見えん。

熟練と鍛錬の成果といったら、羨ましいというだけで、容易に切り捨てる事ができる。そこで見上げるお前には、刃かも分からず、恐怖すら見える事はない。

振り下ろす力もなければ、流れに沿うだけの太刀筋を、ただ見失う。

垂直に掲げる刀身は、遠い近いもなき、一本の線のごとく。
平行に伸びるように近づく刃に、お前は見惚れている。

気づけば千載一遇。

避ければ絶命。

肩に乗る刃を返せば、頸動脈は切断される。

誰からも見られる事のない妖刀、お前が納まる鞘は俺しかいない。
一連の流れで私は、目の前の男を斬殺した。

侍病気

「名前は何と言う?」
「私は、恵。ここに倒れる男の妻。」

「ならば問いたい、何を夢見ておろうた?」
「そう聞くのならば言いましょう。問いの答えとして、受け止める事が必然であるのなら。言葉であれど、言葉であるが故、何者も邪魔建てできぬ、容赦ない真剣勝負となろう。

死に絶えた屍を見るや否や、扇子を取り出し、舞うかのように語らい始める。


死に絶えても月日は、無情にも流れ、
切り出した大地の恵は、受け継いだ者が船へと変える。
船は川を下り、止まらぬ流れを想いてか、碇を手に入れ、
海へ出れば帆を張る。

船に乗る料金はいらぬ。
材料も、流れも、風も、全てが自然の恵みだから。

海に出たら必ず言う。
風が当たり冷える者がおるやもしれぬ、いつか壁を作ると。
ならば明日も、寒さで手が縮こまらぬように、厚手の生地を探しに行く。


納まる処のない話だ。琵琶法師の心得を見た。巻き割りの男が海に出る、良い夢だった。女よ、その船に私も乗りたかった。「燕返し」も切り返せない、その先見の明は、何と美しきことか。人斬りの道を、どこまで進んでも目の前は闇だ。

私の人生は、これまでとする。これまでに成し得たものと、これから先に成しうるものは、何の変りもない。ただ繰り返すだけの事であり、事実そうなっている。身に染みて分かっている事なのに、なぜ新しく一歩を踏み出せなかったのか。

「それが分かれば苦しむ人もいなくなるというのに。」

ただ、終わりにしよう。この妖刀の良い鞘となるものを知っている。それは周囲に浮遊する怨念と、生まれを同じくする我の血肉。

私は今、自分よりも真に強き者だというのに、盲目となって手にかけた。自分を見損なった。私の元の名は「不倶戴天の燕」

女よ、見るがいい。その道を行く者の、一片の悔いもなき最後を。私の死が、真に強き男の証明になる事なんてたやすい。「不倶戴天の燕」は、幕府の用心棒を壊滅させた男と同じ名。

最後まで愚かな答えと、それを容易に成し遂げる鋭利な意力。
この脇差しが、本当の役目を果たす時がきたかのようだ。

不倶戴天を返上させて欲しい。
同じ天の下に、最強の人斬りは2人いらない。
同じ天の下に、最強は1つだ。
私の命が絶えれば、残るも知るも1人。

仇を恨み、憎しみ、相応しき者に会ったのなら、私の代わりとなるであろう。
そいつには「剣聖」の道が開かれている。

私の怨念と連れ添ったものなど、この世に残したくはなかった。未練だ。

女は意味の重複にしばらく身を置いて、何かを悟るかのように村正を拾い上げた。

花魁桜

風向きは変わる、手のひらを反すように。
「燕の返し」も、また極意だと此処に見つけた。
私は此処に記したい。
不変の志があると。

人生を閉ざす日まで志す天職の事か?
死しても受け継がれる船への想いか?
継承される妖刀の持ち主か?
胸に秘めたる男の意志か?

全ては「恵」
「恵」以外に知る者はいないであろう。

日本文化による侍。

影響を受けたいうよりも事実。
役に立つ情報というよりも歴史である。

豊かな時代っていつ?

ちょっと酔っちゃったって余裕を出す。
新しい1ページを作ってみる。
サインペン必須。
こういうのあると遠い記憶になると思う。

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