曇り空の下で。


天気によって傘を持っていくかどうか、迷っていた昔を思い出した。今思えば気楽な悩みだ。今は人生に迷っている。何でもできる世の中過ぎて選択肢が多すぎて困る。今出そうとしている答えは、運命を握っていると言っていいほど重要だ。今のどんよりとした曇り空に似ている。

とにかく職場には行くつもりだが、それですら、ためらっているのだろうか。問題はそこまでに、出さなければならない答えがある事なんだ。


家の窓から外を見ている。職場に着いたシーンを想定しよう。明るく元気よく挨拶をして入れば「今日はいつもと違うな」という空気になる。うん、なるね。昨晩、読んだ本に書いてあった。


軽く会釈をして物静かに座れば、いつもと同じだ。

実に安定している日々の繰り返しだ。これまでの仕事ぶりも良かった。それが功を奏して今がある。それは間違いない。だがここで、明るく元気よく挨拶をして、いつもと違う空気を出せば、退屈な日々に変化が訪れる。昨日までの自分からは生まれ変わったように、成功への糸口を見つけられる気がする。

しかし、ギャンブルだ。急にいつもと違う空気を出してしまった場合、同僚たちが変化のある自分を、快く受け入れて、爽やかな挨拶を返してくれるのか、それとも軽蔑の眼差しで見られ、見てはいけないものを見てしまったかのように視線を逸らされてしまうのか。後者の事を考えると、残念だが耐えられない。出る杭は打たれてしまうんだ。

毎月の負債で、こんなにも乏しい心になってしまっていたのか。いつまでも、いつもと同じでいい訳がない。職場に着くまでに答えを出す、そう決めて家を出た。

ウサギ亀

足取りが重い。常に右足が前に出て歩いているようだ。いつもと同じで風のようにさっと座ればいいじゃないか。心の葛藤の答えを出しておかないと、もうすぐ就業時間だ。

時たま、同じ方向の手と足が同時にに出ていた。

「職場のドアノブが回らない」


この苦しさは何だろう、握りしめているものは何だと目をやると、ドアノブだった。なぜか手が震えだしている。5分前行動なんて日本社会の鉄則だ。こんな事もあろうかと日頃から10分前に到着している。抜け目はないぞ。

5分前行動より、さらに5分前に到着する事により、余裕を持って仕事に励むためだ。この時間がある事が1日分のリラックスの元になり、頭の中が整理されて、定時となった時には能率的な成果につながるんだ。そう書いてあったんだ、本に。

時計赤

この余裕を答えを出すために使おう。そうやって5分を使ったとしても、5分前行動は崩れていない。素晴らしい、これが余裕なのか。なんて清々しい気持ちだ。いや、待て・・・。

肝心の答えが出ていない。それがないと、このドアの先へ進む事ができない。もう目の前のドアの向こうに同僚たちはいるんだぞ。どうする、アイ〇ル?
そうだ、今日の分の日当があれば、ドアの先へ進まなくてもいいじゃないか。そうしよう、アイ〇ル。

そんな訳にはいかない、出勤しないなんて。


堅実なジャパニーズスタイルだ。そもそも、ここまでの通勤の間に答えを出すはずだったんだ。後ろ髪を引く想いを、足を引きずってでも、止まることなく通勤してきたんだ。どうするんだ? 答えはどうする? アッ・・。

本で読んだ先人の明ある、余裕の5分。今回は、こんな葛藤で費やしたのだが、やはり有意義であった。5分前に答えを出す事ができた。明日からは15分前だ。

5分前行動は鉄則だ。それに遅れないように5分前に到着する。まずは、そこから始めてみたらどうかと思います。この思想、この概念、これがジャパニーズスタイル。今は無理をしなくても15分前は、もうちょっと先の話で構わない。

1ミリのズレも、ありえません。

メイド・イン・ジャパン。
安心と信頼の日本製。

結局、どうするの?

目を合わさずに独り言を言う状況にした。
息を止めて透明人間の振りをする。
窓際に進み遠くを見て暗い空気を出す。

あっ、良書ってこのこと?これ1冊で良かった。

いかに自分が情けない表情なのかは、
内面の葛藤と反比例しているようだ。
それ相応の悔しさや悲しさは、
もっと高貴な姿形をする資格を持っているだろう。
その気持ちを現に報いてというのなら、
鬼の表情をした般若のようだとしても足りない。
「ムンクの叫び」にも垣間見える、
その気持ちと相応しい表情を、
誰しもができる事ではないということ。
私の苦しさは、そのくらい、それでも足りない。
幾分かマシなだけでしょう、その絵が。
なんと情けない顔で現世にいる事でしょう。
なんと情けないんだ、人生は。

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